JR東海バスの集中企画第3弾である。
JR東海バスというと、どうしても瀬戸に目が行きがちであるが、つばめのバスが走り続けたもう一つの街、春日井市にも光を当てておきたいと思う。春日井市では、春日井駅と高蔵寺駅から各1路線が発着していた。 ここで春日井でのJRバスの歴史をたどってみたい。昭和5年に岡多線が開業。戦後になって、高蔵寺駅を中心に路線を拡大。尾張細野~尾張西尾や勝川~坂下など、最大で7路線を展開した時期もあったが、半数以上は廃止された。昭和27年、高蔵寺~春日井間にバス路線を開設し、本格的に春日井市中心部に乗り込んだ。昭和31年、春日井~下原間を開業。
 JR春日井駅から郊外の大池住宅を結ぶ路線は、JR中央線春日井駅の目の前から発着する。電車からの連絡は抜群に良い路線だ。昭和31年に開業し、後に小牧市の大草・造形大学まで路線を延長した。春日井市の発展に伴い利用者数が徐々に増加し、統計によれば昭和50年に1日当たりの運転本数48回で1日当たりの利用者が1,245人だったが、平成2年には89回で2,737人へと倍増した。ところが、この年を境に利用者が減少に転ずる。平成4年に前年比30%近い減少を記録し、その後も5%以上の減少が続き、平成14年には884人(運転本数は86回)までに減少。路線存続の危機に瀕した。名古屋造形大学がスクールバスを導入したことから小牧市から撤退し、春日井駅~大池住宅前間のみで走り続けた。
 国道19号線を走るつばめのバス。ところが、ジリ貧のバス路線に最後の光が当たるチャンスが訪れた。平成18年、小牧市の桃花台線(ピーチライナー)の廃止である。小牧市桃花台は名古屋への交通アクセスが不便なのが課題だった。桃花台から大草までは1kmほど。JR春日井駅までクルマで移動する人も多いなか、大草バス停まで家族の送迎による通勤・通学する人もいた。廃止確定後、JR春日井駅へのバス路線延長を求め桃花台住民から要請もあったが、JR東海バスはあっさりと拒否したのだという。既にJR東海バスは一般路線バス全面撤退の準備に入っていたのだ。バス路線としてのラストチャンスが幻になって、鳥居松(春日井市の中心)も通らない、純粋に沿線と春日井駅を最短距離で結ぶだけの路線バスとして最後の日を迎えた。
春日井駅のJRバス乗り場にて。既に名鉄バスと春日井市のコミュニティバスのポールが設置されていた。しかし、なぜ名鉄バスはわざわざ分散させるのか。
 春日井駅には名鉄バス専用のバス乗り場がって、大型バスが同時に2台停車できるようになっている。容量としては十分なはずで、個人的には桃花台から来ているあおい交通のバスが、念願の春日井駅乗り入れを実現できるか密かに期待していたのだが。
 国道19号線上のバス停では、名鉄バスの新バス停工事が進んでいた。国道区間だけは卓上据え置き型ではなく、地に根を張るタイプ。行政指導なのだろうが、名鉄バスに転換しても簡単には撤退しないという名鉄バスの決意が伝わり、地域住民へ安心感を与えることだろう。
続いて、高蔵寺駅発着のつばめのバスだ。
 古くからの集落と高蔵寺ニュータウンの一部を結ぶ路線だ。かつては尾張細野や植物園まで運行されていたが、現在は高蔵寺~押沢台~高蔵寺の循環路線である。
 古くからの集落・玉野町にて。昭和50年に1,245人だった、1日当たりの利用者数は徐々に減少。ここ10年ほどは下げ止まり、1日700人ほどの利用で推移した。こちらも代替バスが走るが、地域の利便性を考慮すれば、高蔵寺駅~玉野~高蔵寺ニュータウン~高蔵寺駅北口の路線に改編されそうな気がする。利用者・名鉄バス双方にメリットがあるからだ。
高蔵寺駅にて。
 JRバスの回数券などは、駅の「みどりの窓口」で販売しているのだが、ここではJR東海バスの回数券販売を
 駅高架下の書店に委託していたのだ。かつてはみどりの窓口で行っていたのだが、窓口の混雑激化緩和を目的に委託料を払ってでも外部委託した方が得策と親会社は考えた模様。しかし、1日700人程度の利用しかないバス路線の業務を外部委託しても焼け石に水なのは明確なのであって、親会社のJR東海が路線バス事業をいかに軽視していたかを象徴する場面であった。(続く)
【参考】 「春日井市統計書」春日井市
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