 「名古屋の殿様」こと、名古屋市の河村たかし市長が名古屋市内を走る「あおなみ線」にSLを走らせる構想をぶち上げました。膨大な累積赤字から経営破たんしたあおなみ線に「客寄せパンダ」としてSLを運行し、終着駅の金城ふ頭駅近くにある「リニア・鉄道館」とリンクさせて利用客増加を図ろうとする考えでしょうが、疑問点や課題が多く現実性に乏しい話だと思うのは私だけでしょうか(画像は中日新聞2011年7月2日夕刊より)。 確かにダイヤグラムには余裕があるので、走らせることはできるはずです。しかし、SLは車体重量のある車両です。貨物ターミナルのある中島駅までは何とかなるでしょうが、その先の区間はあおなみ線建設が決まって旅客電車の走行を前提に建設された区間ですから、高架が重量に耐えられるのかという問題があります。次に機関車の向きを変える「機回し線」が無いこと。更には騒音・煤煙の問題もあります。また、いまどきSLの機関士が確保できるのかという問題もあります。SLが大井川鉄道など一部を除いて日本から姿を消して30年余り。元国鉄OBに頼ることすら困難になっています。 これを克服した例が四国の松山・伊予鉄道にあります「坊ちゃん列車」。市内の軌道を外見はSL、実態はディーゼル列車として運行されています。
根本的な問題として、あおなみ線にSLが似合うのかという問題もあります。工場地帯や臨海エリアの高架線をノスタルジックなSLが駆けるというアンバランスさは、一時のイベントとしては面白そうですが風景としては明らかに異質であり、風情も何も無いと思います。 トドメは名鉄パノラマカーも走らせるという話。リニア・鉄道館はJR東海の博物館ですから、タイアップしてくれるとは思えません。そして、パノラマカーがなぜ引退に至ったのかを河村市長は理解されていないこともハッキリわかりました。
 実は河村市長がSLの運行をぶち上げたのは今回が初めてではありません。昨年4月、岐阜県多治見市長が名古屋市役所を訪ねた折にも、河村市長はJR中央線名古屋~多治見間にSL運行を提案し、多治見市長と共にJR東海に働きかけることで合意したという記事が出ました(画像は中日新聞2010年4月17日朝刊市民版より)。 こちらも問題点がいくつもあります。まずはSL故の煤煙問題。金山駅や千種~大曽根間の掘割区間、そして高蔵寺~多治見間のトンネル区間をどう克服するのか。数年前から産業遺産としての復活活動が続いている、昭和41年まで使用されていたJR中央線旧線・高蔵寺~多治見間の愛岐トンネル群を利用して京都の嵯峨野観光鉄道(山陰本線旧線)みたいにするのも一考ですが、多治見市側の一部が月見センターという下水処理場の敷地になってしまい、トンネルが天井部分を除いて埋没されてしまっており、この案も幻になってしまいました。 案の定、JR東海からは一切の発表も無く、この構想も闇に消えようとしています。観光振興も大事なんですが、SL走らせたら目玉になるという安直な発想では、実現していかないでしょう。現実性の無い妄想だけなら誰でも出来ます。想像だけでメシが食えたら、誰も苦労しませんよ。
名古屋市の河村たかし市長は1日の市議会本会議で、名古屋駅と名古屋港を結ぶ名古屋臨海高速鉄道「あおなみ線」に蒸気機関車(SL)を来年度にも走らせる構想を明らかにした。赤字脱却を目指す一策だが、高架軌道を走らせることができる軽い車両の確保や排煙などの問題があり、実現には多くのハードルがある。 河村市長は「新幹線に乗ると、あおなみ線のホームはすぐ隣。あそこにSLあれば、みんなが『ええなあ』と思うはず」と説明。プロジェクトチームを直ちに発足させる方針を示し「12年度中には走らせたい」と述べた。 あおなみ線は市と愛知県が出資する第三セクターで、名古屋-金城ふ頭間(15.2キロ)を結ぶ。04年に開業したが、10年7月に事実上経営破綻。市と県が約450億円を財政支援し13年度までの黒字化を目指す。 引用元:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110702-00000008-mai-soci
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