名古屋市が全国に誇る制度「敬老パス」。65歳以上の高齢者に1,000~5,000円で配布されている市バス・地下鉄乗り放題の乗車券です。しかし、どうも敬老パスの不正利用があるという噂です。情報源は意外にも名古屋市議のブログからでした。 河村たかし名古屋市長との論戦で有名になった名古屋市議会議員の横井利明氏。一時は市長批判の急先鋒として激しい批判にさらされた時期もありましたが、一方で自民党支持者でない私が見ても、議員としては随分できる方だと思います。それを象徴するのが、ほぼ毎日マメに更新されるブログ。議員活動に限らず議会や市政、市内の諸問題などに掘り下げや斬り込みを見せてくれます。今回の元ネタもこちらからの話題です。
横井氏のブログによれば、名古屋市内在住の高齢者が市外に暮らす高齢者に対して、敬老パスを5~6万円で不正譲渡しているとの噂があるそうです。名古屋市交通局には敬老パス同様に市バス・地下鉄乗り放題の「全線定期券」がありますが、「1か月券」は18,200円、「6か月券」は98,280円と高額であることから、平成22年度の発行枚数は6,400枚。 一方で市内在住高齢者が年間1,000円・3,000円・5,000円(所得により負担金に差がある)であるため、差額が19~21万円にも及ぶことから、名古屋市内への往来に必要とする市外在住高齢者と、小遣いの欲しい市内在住高齢者との意思が合致し不正譲渡しているとの疑惑が浮上しているとのこと。敬老パス利用者1人に対して37,000円とも42,000円ともいわれる名古屋市民の税金が投入されていますから、名古屋市民として敬老パスの不正譲渡は許せない事態です。
でも、このような実例は以前から噂になっていました。本人確認は発行時しか行われないため、手に入れたらこっちのモノ状態で、その敬老パスが本人のものかを判断することはできない「持参人方式」の乗車券になっているためです。これは名古屋市だけの話ではないようで、周辺自治体でも類似ケースとして高齢者に名鉄バスで使える高齢者用バスカードを配布しながら、高齢者やその家族が日常的にバスを利用しないという理由で換金し、名古屋市内の金券ショップに流出する事例がありました。 横井氏のブログによれば、窓口で敬老パスを購入すると、その場で不正譲渡対策としてサインペンで氏名と性別を記入しているが、更に確実に特定するため敬老パスに写真を貼ることを過去に市議会で議論したことがあるようです。しかし、磁気カードである敬老パスに写真を貼り改札を通すと、写真がはがれ改札機が故障する可能性があることや、仮に写真を貼ったとしても、改札機では写真の読み取り不能で本人と判断できないことから困難という結論だったそうです。 また、敬老パスは紛失による届出から1か月後に無料で再交付されるそうで、不正に再交付申請すると、申請の翌月には2枚以上の敬老パスを所持することも可能とのこと。敬老パスの紛失による再交付制度にも問題があるようです。 更に昨年10月に行われた名古屋市事業仕分けでは、敬老パスが磁気カードであるため、所持者の利用実績は追跡不能であることも明らかとなり、敬老パスはこの種の網を掻い潜った不正利用が起きやすい「ザル」のようなシステムだったことも分かりました(当時の弊ブログ記事はこちらへ)。
こうなると、対策として名古屋市に提言したい。
敬老パスは一刻も早くmanacaに移行せよ!!
ICカード乗車券に移行することで、運転士や駅員による手動カウントから機械化されるため、利用実績や再交付実績も一目で分かるはずで、特に1人で敬老パスの複数枚所持は封じ込めるはずです。また、敬老パス利用による名古屋市健康福祉局からの運賃補てんも正確な金額によって補填されるので経理も正確になります。更にmanacaのデポジット収入もバカにならず、現在敬老パスが30万枚発行されていますから、初年度は1億5000万円の増収にもなります(おそらく、実施すると少し減りそうな気はしますが)。ただ、仮にmanacaに写真を搭載してもICカード化により、敬老パスを財布や定期入れに入れたままカードリーダーを通過する人も出るはずで、本人確認ができないという問題は残ります(良い方法無いですかね)。
そして、これは名古屋市民だけの問題ではありません。周辺自治体も現実に目を向けるべきでしょう。特に名古屋市交通局の路線に大きく依存する日進市・長久手市・大治町は、高齢者住民でも名古屋市内への日常的な移動があることから、名古屋市から敬老パスの発行が受けられない代替処置として全線定期券購入時に費用の一部を補助するか、逆に名古屋市が周辺自治体在住高齢者向けに「市外在住高齢者用敬老パス」を発行するなどの対応が必要になるかと思います。 ただ、前者の場合は一人当たり年間で10万円以上の負担を周辺自治体が飲むとは思えませんし、後者についても敬老パスが名古屋市健康福祉局が交通局に実費精算される仕組みを応用し、manacaによる利用実績から周辺自治体が名古屋市交通局に運賃を負担するとしても、その負担金額がいくらになるか戦々恐々な上に予算オーバーの危険も想定せねばなりません。ただ、周辺自治体は名古屋市への依存度の高さや住民のライフスタイルに合わせる必要はあり、難しい問題ですが取り組むことに一考の価値はあると思います。
【参考】横井利明オフィシャルブログ「敬老パス不正使用はないと信じたいが...」 http://blog.livedoor.jp/minami758/archives/1885326.html
横井氏はおそらく専門外かと思われますが、乗り物の話題でも実にマニアックな記事を提供しており、最近ではあおなみ線の話題の他、少し前には地下鉄東山線の「柳橋駅構想」というマニアックな話題を公開し、乗り物好きを唸らせてくれました。まさか、名古屋市当局が3年前に話題にしていたとは。詳しくはこちらを↓ 横井利明オフィシャルブログ 地下鉄「やなぎばし」駅 http://blog.livedoor.jp/minami758/archives/1887685.html
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