 「鉄道の日」という記念日があることをご存知でしょうか。これは明治5年9月12日(新暦1872年10月14日)に、新橋駅(後の汐留貨物駅、現・廃止)と横浜駅(現在の根岸線桜木町駅)を結んだ日本初の鉄道(現在の東海道本線の一部)が開業日です。そして、1921年(大正10年)10月14日に鉄道開業50周年を記念して東京駅の丸の内北口に鉄道博物館(初代)が開館したことを記念し、翌1922年から当時の鉄道省により鉄道記念日と制定され、1949年には日本国有鉄道の記念日となったものの私鉄には普及せず、1994年に運輸省(現・国土交通省)が「『鉄道記念日』のままではJRグループ色が強い」という提案で「鉄道の日」と改称し、JRグループを始めとしたすべての鉄道事業者が祝う記念日となっています。それを祝して、毎年10月第2週又は第3週の土曜・日曜に全国各地で鉄道の日イベントが行われます。
 全国的には東京の日比谷公園で行われるのが有名ですが、名古屋でも金山駅のコンコースで中部地方の鉄道会社が集まって、鉄道廃車部品(吊り革、方向幕など)や鉄道事業者のグッズの即売会が行われます。今回は10月6~7日に名古屋の金山駅コンコースで行われた鉄道の日イベントの模様をお届けします。 金山駅に集まったのは、JR東海・JR貨物、名古屋市交通局・名鉄・近鉄・名古屋臨海鉄道・愛知環状鉄道・明知鉄道・長良川鉄道・養老鉄道・伊賀鉄道・天竜浜名湖鉄道・遠州鉄道・伊豆急行など、静岡県を含む東海4県下の鉄道事業者。 交通事業者共通の願いは、利用者数の増加と増収です。そのためにも利用促進の為のPR活動に熱心です。ただ、こういうイベントですと各社でその「経営センス」や「やる気」がここまで違うものなのかということを痛感します。
 交通事業者はグッズ製作にやたらと熱心です。それには流行があるようで、少し前はチョロQの製作に熱心でした。最近は駅名版のキーホルダーの制作に熱心です。しかし、そんなに売れるものなのでしょうか?有名な駅なら少しは売れそうですが、普通列車しか止まらない無人駅のキーホルダーとか、一体どの程度の需要があるのか、不思議で仕方ありません。私も個人的に欲しい駅キーホルダーはありますが、多分無いでしょうな。「越後広瀬」「入広瀬」(共にJR東日本・新潟県)「ひろせ野鳥の森」(秩父鉄道・埼玉県)。あれば買いますが、1つだけで十分です。 第3セクター鉄道会社は特に熱心です。岐阜県の明知鉄道ブースには小倉沙耶さんの姿が。観光大使に任命されているため、明知鉄道がらみのイベントでよく見かけます。「鉄子」ブームでいろんな鉄子さんが出てきましたが、インパクトや売名目当ての人が多い中、知名度よりも継続して同一会社を支援することを重視する姿勢は個人的に評価したいですね。
 特に明知鉄道は鉄道グッズの他に、使用済みの切符を1枚20円で売ってみたり、涙ぐましい経営努力をされています。 一方で、アイデアや戦略が中途半端なために、在庫過多などの逆効果になっている会社もあります。こちらは長良川鉄道のブース。硬券入場券といえば、記念で買っていく人が結構多いのですが、肝心なダッチングマシーン(日付印字機)を持って来ていないとのこと。せっかくの鉄道の日なのに、イベントの記念日を記録できないなんて非常に残念です。本来、現地まで行かないと手に入らない切符が手に入るのですから、値段も手頃であることから、その筋の方なら次々と買ってくれるはずです。1時間程会場にいましたが、殆ど売れていませんでした。その原因は職員の戦略ミスに他なりません。 数年前のイベントでは、愛知環状鉄道が沿線にある大学受験日にしか販売しない、幻の硬券乗車券をダッチングマシーンで日付を付けて売ったら、あっという間に在庫が掃けたそうです。どうすれば、在庫が掃けるか、増収につながるかを真剣に考えるべきです。
 コレクターが群がるのは使用済みの硬券や常備券。高額な券ほど良く売れます。実際、こちらはそこそこ売れていました。一方で、開業後数年の間に乱発した記念乗車券が不良在庫として残っているようです。おそらく、5年・10年先でも売れ残ることでしょう。なぜなら、それはニーズに符合しない商品だったからです。10年も20年も前の乗車券が残っているというのは、鉄道会社からしたら恥です。食品と違い、黙っていても売れる商品ではありません。買ってもらうためには、購買意欲を掻き立てるセンスが必要ですが、特に第3セクター鉄道は赤字経営前提でモノを考える経営者が多く、組織全体の士気にも影響しているケースが目立ちます。 どうすれば、売上が上がるのか。それは交通機関の存続と共に自身の雇用を確保し維持することでもあります。どうも、こんな意識が低い業界でもありますが、それを意識する時代を迎えているように感じます。
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