 公共交通機関に導入が進められているICカード。最近では全国各地のICカードが共通利用できるようになり、利便性が向上しているように見えましたが、意外なところで欠点が浮上しているようです。 3月30日、愛知県新城市のJR飯田線で、豊橋発本長篠行き電車が東新町駅到着時に乗客4名がICカードで運賃精算を申告するも、この駅はJR東海のICカード「TOICA」非導入区間にあり、車内での運賃精算もできないことから、JR東海の規定に従い乗車駅を申告してもらい全区間の運賃を現金精算し、証明書を発行しICカードでの乗車記録を消去依頼する用紙を発行したそうです。 この電車は車掌のいない「ワンマン電車」であるため、時点で10分ほど発車が遅れたのですが、更に先の茶臼山駅では浜松市内の駅から乗車した16名が同様にICカードによる運賃精算を希望したことから、運転士一人での運賃精算処理が難航。最終的に電車が92分遅れ、折り返し電車にも約50分の遅れを出してしまったそうです(画像は2013年3月31日中日新聞朝刊より)。
 半月ほどして、この問題を中日新聞は再び掲載しました(画像は2013年4月16日中日新聞朝刊より)。 この手のトラブルはICカードの利用が進むJR東日本管内からの越境利用者に多く、静岡県内の沼津駅や三島駅ではJR東海道線の東京・横浜方面からの越境利用者が多く、長野県の木曽地方や伊那地方ではJR中央東線で新宿・甲府方面やって来る越境乗車客に多いようです。 東海道線は熱海駅まで、中央東線は山梨県の韮崎駅までがICカード「Suica」対応区間であり、東京方面からの利用者がそのままICカードが利用可能と勘違いしてやってくるものと思われます。前者は無人駅がほぼゼロなので駅で清算できますが、前述の通り乗車駅からの全区間について現金清算を行うため、ワンマン電車の多い中央西線や無人駅の多い飯田線ではトラブルに発展することもあるようです。 例えば、東京・新宿駅から「Suica」でやって来た利用者が、電車を乗り継ぎJR東海管内・中央西線の奈良井駅まで乗車した場合、中央西線の電車内で「Suica」の決済ができないことから、運転士(又は車掌)に新宿駅からの運賃3,890円を別途現金で請求されることとなります。これでは、せっかくの休日観光もぶち壊しでしょうね。
話を飯田線に戻します。JR東海は今年3月23日からのICカード共通化に際し、「TOICA」の利用範囲をポスターで掲示し、豊橋~豊川間の電車では車内アナウンスをしているそうです。今回のトラブルを踏まえ、JR東海は新たに豊川駅より先で下車する場合は切符を買うように求めるポスターを掲示したそうです。しかし、ポスター貼った程度で周知できているなんて、読みが甘すぎます。ポスターなんてあって無い様なものです。 今回のトラブルに巻き込まれた利用者は、飯田線を普段利用することの無い一見さんであり、飯田線の現状についての事前情報は無かったのだと思われます。そもそも、この区間はICカードが使えるかなんて、いちいち調べる人は極めて稀です。本来、公共交通機関は弱者に優しいシステムや制度を構築せねばならず、ICカードの利用区間を制限するのは、バリアを無くす公共交通の方向性やICカード共通化の理念を鉄道会社が自ら否定しているようなものです。 飯田線の愛知県側では、豊橋~豊川~新城~本長篠と同じ東三河経済圏であり、豊橋方面への鉄道利用が多いのに、豊川~本長篠間は利用者数の少なさや既存の無人駅対策に設備投資できず、ICカード導入を見送ったことを棚に上げて、一般のお客さんに「あらかじめ、乗車駅から下車駅まで全区間の乗車券を購入しろ」なんて、どの口が言うのやら。まさにJR東海クオリティ。ここでも如何無く発揮されています。
この手のトラブルを回避する方法としては、以下の方法があるかと思います。 1.すべての駅をICカード対応とする 理想的ですが、カネがかかり過ぎるはずです。 2.ICカード利用可能の区間だけで列車を走らせる。 この種のトラブルを回避するため、カード対応区間から非対応区間への直通列車運行を取りやめる。 3.電車内にICカード対応の料金箱を置く バスの様に車内でICカードを用いて運賃清算を可能にするもの。
1はJRの負担が重いですし、2は鉄道利用者に不便が生じます。現実的なのは3です。カード読み取り機を駅ではなく電車内に設置すれば良いだけです。バスにできて鉄道にできないのはなぜか、不思議でなりません。東海地方では豊橋鉄道の路面電車でも導入されており、不可能ではないはずです。 また、同一地域経済圏でありながら、ICカードの利用可否が分断しています。飯田線の豊川~新城間や、関西線の四日市~亀山間などの同一経済圏内での分断は一刻も早く解消すべきでしょうね。
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