 駅弁、買って食べたことありますか?最近はコンビニやファーストフードの普及により、駅で購入する機会そのものが減り、デパートの物産展やスーパーの駅弁祭りでしか買わない人も多いかと思います。
岐阜県のJR美濃太田駅で行われていた駅弁販売。本州最後の「立ち売り」が行われていることで有名でしたが、5月末で美濃太田駅での販売を終了することとなり、美濃太田駅を訪ねました。 美濃太田駅で有名だったのは「松茸の釜飯」。素朴な釜飯として、人気のあった駅弁の一つでした。約20年ぶりに買い行こうと出かけました。
 5月某日の昼下がり、午後2時ごろの美濃太田駅。駅弁を買い求める人がホーム内の販売ブースめがけて集まっていました。ところが、ところが・・・。
 釜飯は売り切れました。
 そりゃ、みんな戻っていくのがわかります。立ち売りスタイルの社長が駅改札口へ向かいました。追加の弁当が届いたのでしょうか? しばらく経つと弁当を2つだけ持って戻ってきました。今日は売れないと思ったのでしょうか。
 美濃太田の駅弁売りについては、30年ほど前から知っていましたが、当時と随分変わったと思ったのは私だけでしょうか。当時の弁当売りも随分ベテランの方でしたが、もう小柄で細身の方でした。以前は、特急・急行列車に限らず普通列車でも大声で呼び込みをかけて弁当売りがホームを歩きまくっていました。 【参照】新米ライター望月の駅弁膝栗毛 2003年当時 http://www.ne.jp/asahi/eki-ben/hizakurige/mochiduki/0310/0310.htm 社長が自らホームに立つようになったのは10年程前からとのこと。近年はホームでの呼び込みを止め、来た人に買ってもらう「受け身」スタイルだったそうで、駅ホームで立ち売りするのも、昼間の一部の列車限定だったそうです。売り込みもしないのだから、売れるはずもないわけで。全盛期には30名近くいた従業員も退職や解雇などして、数年前からは夫婦だけで事業を継続していたそうです。 【参照】アサヒマリオン.コム 「ひとえきがたり 美濃太田駅」 2014年当時 https://www.asahi-mullion.com/column/article/station/478
 ここ10年程で周辺の環境は大きく変わりました。名古屋から飛騨へのルートが多様化し、高速道路の整備でクルマや高速バスに多くが移行しました。名古屋から富山への都市間移動でも、ついに高速バスの利用者が特急ひだや特急しらさぎを抜いたそうです。美濃太田駅での特急列車の停車時間はわずか30秒。駅弁売りにたどり着く前に列車が発車してしまうのです。また、日本ライン下りの休止により、美濃太田駅での観光客の下車がほぼ皆無となったことも大きく影響していると言えます。 時代の流れと駅弁の売り上げの変化。駅弁小屋のいすに腰掛けながら、時代の流れと駅弁の運命を共にしたことでしょう。近年は新聞報道によると「1日10個売れたら良いところ」とのことで、ホームの駅弁ブースの営業時間も10:00~16:00まで。お昼前後の高山方面行特急列車数本が売れ筋の生命線で、そこで売れないと苦しい状況だったようです。
 5月26日、駅弁販売最後の日曜日に、美濃太田駅を訪れました。昼下がりの駅弁ブースの前には行列が。駅弁の注文も「6個」「10個」と前日までに予約したと思しき客へ移っていきます。夫婦だけの営業。とてもこなせるレベルでない注文が入ったのでしょうか。 こういうときはどうにもならないものです。しびれを切らしたのか、「遠くから買いに来たんですよ」と大声張り上げるヒステリックなオバハンがいました。販売終了目前なのですから、この手のトラブルは想定の範囲内です。そんな感情むき出しにしたって、無いモノは無いのです。遠くから日程を組んでこられるなら、もっと早めに来るべきなのです。
 駅近くの厨房から次々と弁当を運び込むも、予約客の分だけで既に完売状態。予約者でも手に入らないトラブルまで勃発する始末。販売ブースで予約を試みるも「弁当を確保できる保証はしない」と言われてしまい、とても買える状況ではありませんでしたので、購入を断念して帰宅しました。画像右側が奥さん。左側の人が夫婦どちらかの妹だそうですが、この人の応対がデタラメで、岐阜弁の欠点でもあるのですが、赤の他人から見ると言動が馴れ馴れしく聞こえるので、余計火に油をかけやすいところがあり、駅弁ブースでの応対でキレたオッサンもいました。
 少し前に「駅弁ひとり旅」というマンガを読む機会がありました。旅を通じて全国の名物駅弁を紹介していく作品なのですが、読んでいて非常に気になったのは、駅弁の購入方式の変化。先着順で限定何個という販売ならまだしも、世の中にはあらかじめ予約をしないと買うこともできない駅弁の多いこと多いこと。それをすべて電話などで事前予約して手に入れている点。これを見て興覚めしました。駅弁も予約しないと手に入らないほど敷居の高いものになっていたのかと。食材ロスとか、経営者側には都合の良い話なんでしょうけど、鉄道会社への寺銭もあり値段も割高なうえに、手軽さも失われた駅弁に未来があるのだろうかと、ローカル線の駅弁の最終章に立ち合いながら考えさせられました。
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