鉄道やバスなど公共交通機関の「利用方法が分からない」という人、身近なところにもたくさんいます。しかも、その障壁となっているのは何かを尋ねてみると、「電車の切符はどのようにして買うのか」「駅の自動改札はどう通過すればよいのか」「バスは前後どちらの扉から乗れば良いのか」「運賃を支払うのは乗る時か降りる時か」「ICカードはどう利用するのか」など、普段公共交通を利用している人にとっては考えられないレベルで引っかかっていることが分かります。また、「高校卒業以降、公共交通機関を利用したことが無い」など、公共交通機関との縁のない生活を送っている人も多く、これらの要因が公共交通の利用者が減少する要因の一つとも言われています。
 名鉄バスが愛知県東郷町で高齢者に対して「バスの乗り方教室」を開催したそうです(画像は2012年7月19日朝日新聞朝刊「名古屋」より)。今回は名鉄バスが東郷町内にバス路線を新規に開設したことから、沿線の高齢者を対象にバスの利用方法についてレクチャーする目的で行ったとのことです。公共交通事業者がバスを利用してもらうための取り組みを行うことは非常に良い傾向だと思います。なお、名鉄バスは9月に瀬戸市でも行うそうです。 愛知県を中心にしてICカード「manaca」が普及して1年。名古屋市交通局では利用者が利用実績により貯まったポイントを還元しておらず、失効の危機にあるポイントが金額換算で億単位に上っていたことが少し前に明らかになりました。つまり、利用者サイドでは回数券などが無くなってしまったので、仕方ないからmanacaを使っている程度の認識にとどまっていることが多く、その利用方法については理解が進んでいないことがわかります。なかには「ポイント還元の方法が分からない」という人も多いと聞きます。その累積が億単位の還元ポイント失効を招き、利用サービスの提供が的確に行われない結果が「実質値上げ」などと誤った解釈につながり、公共交通離れを招きかねないわけです。
 三重県では、亀山市の小学生が実際に自分で切符を購入して鉄道の利用方法を学ぶ体験学習が行われたそうです(画像は2012年6月6日伊勢新聞より)。このイベントでは関西線関駅から津駅までJRを利用し、津駅で近鉄に乗り換えて松阪駅まで行く行程で、JRと近鉄とのシステムの違いを知りつつ鉄道の利用方法を学ぶ、なかなか手の込んだ内容だったようです。 公共交通を利用することによって、社会のルールすなわち公共道徳を学ぶことができます。できるだけ早いうちからこのような教育を行うことによって、社会のルールを学ばせることは非常に大切なことだと思います。また、一人で切符を買って遠出ができた、この成功体験は子どもたちにとって大きな自信につながることでしょう。
大人も子どもも、地域の公共交通の利用方法ぐらいは社会ルールや社会常識の一つとして、利用頻度の如何を問わず覚えておくべきです。また、交通事業者も利用して欲しいのなら、積極的に地域で「乗り方講座」などのイベントを行ったり、利用者の声に耳を傾けるべきです。双方の意見が乖離したまま歩み寄りがないから、公共交通において国や自治体の補助金を得て様々な社会実験を行っても、地域住民に周知が及ばない「笛吹けど踊らず」状態が各地で展開されているのです。
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