9月3日分の続きである。 これまでのあらすじ→http://kouryudo.blog61.fc2.com/blog-entry-468.html
お昼を過ぎて、投票者の足がぱったりと止まってしまった。区長と呼ばれる町内会長にあたる爺さんが心配になって投票所へ駆けつけた。職員に投票率を確認する。不在者投票を含めて50%ほどと伝えると、これを防災無線で放送しても良いかと聞いてきた。街全体への放送はできないが、区長が使用権限を持っている防災無線からできる限りの範囲内で投票を呼び掛けたいという。困惑する職員。役場へ連絡を取り、OKとのこと。すると、区長は投票所脇にある防災無線からマイクを取り出して放送を始めた。 「本日は衆議院議員選書の投票日です。この選挙は我々が国政に参加できる貴重な機会です。大切な1票を無駄にしないよう、投票に行きましょう。」 午後1時を過ぎて、区長の呼びかけに応じた有権者が徐々に集まり始めた。しかし、意識的に参加する人は大概午前中には投票を終えてしまうものである。だから、連れに「○○と書けばいいのか?」と聞く人や、投票用紙を見せて「ここに参加の証明で自分の名前を書けばいいのか」など、意味不明な珍質問が続出した。いい歳して投票の仕組みも知らない国民が日本にはまだ相当数いるようだ。 区長の呼びかけも空しく、1時間後にはまた足が止まった。ところが、投票所と集落をピストン輸送しながら、1人暮らしの高齢者を何人も連れて来る、世話好きおばちゃんが現れた。「投票は国民の義務だで、ちゃんと来なかんのだよ。」といいながら引っ張ってきたのだ。オバチャンは4人のお年寄りを投票に誘った。先ほどの区長も、このオバチャンも思っていることは同じことなのだ。 午後2時。遅い昼食をとる。選挙の公正を守るため、投票所の係員は投票時間終了まで投票所から外出することができない。籠の中の鳥なのだ。朝買ってきたコンビニ弁当と1.5Lのジュースで空腹と渇きをいやす。 午後3時。誰も来ない状態が20分以上続く。小腹も満たし猛烈な睡魔が襲う。8時間以上イスに座ったまま。エコノミークラス症候群になりそうだ。 午後5時。区長が再度放送を実施。買い物帰りの住民が再び集まり始めた。ちなみに、お年寄りを中心に字が書けない人、目の不自由な人もやってくる。字が書けない人は口頭又は指でさして候補を特定して町職員が投票用紙に書き込む。目の不自由な人は点字による投票を行う。午後6時には投票率65%突破。不在者投票を含めると70%突破だ。国政選挙としては異例の数値だ。 午後7時。区長が再度放送。すると、オッチャンがすごい咳をしながら入ってきた。重度の喘息のようで、3歩歩くとせき込んでしまう。普段は酸素ボンベを使っているはずだ。今回の選挙の重要性を知ってか、ボンベを忘れても投票へ参加する必死な姿に心を打たれた。職員が両肩を抱えながら投票台へ運び込む。投票所の係員全員が、無事に投票を済ませることができるかを見守った。 午後7時55分。職員が撤収作業を始めた。残り5分なのに閉めるのはいかがなものかと思うのだが、職員は開票作業へ急ぎたいからだという。記入台と投票箱を残したすべての設備を片づける。8時。投票終了。投票率は不在者分を含め73%だった。8時10分。会場撤収作業完了。私も14時間ぶりに投票所から解放された。 投票所へ駆けつける人々の様々な思い、人間模様を観察できた充実した1日だった。(完)
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